2023年4月からの新しい遺伝子組み換え表示制度について

2023年4月から、4年の経過措置期間を経て新しい遺伝子組み換え表示制度が完全施行されました。

正直なところ、新しい表示制度が消費者に広く浸透しているとは思えない状況で、実際に「遺伝子組み換えでないという表示がなくなると聞いたけどどういうこと?」等といった問い合わせが多く入ります。

消費者としても、きちんと制度の変更について理解をしていくべきです。

今回の改定のポイントをしっかりと押さえておきましょう。

図で表すとこのようなイメージです。

現在日本で安全性審査を経て流通が認められている遺伝子組み換え農産物は以下の9つです。(2023年5月現在)

・ ダイズ(枝豆および大豆モヤシを含む)
・ トウモロコシ
・ バレイショ
・ ナタネ
・ 綿実
・ アルファルファ
・ てん菜
・ パパイヤ
・ からし菜

食品にこれらの農産物を使用していて、それらが遺伝子組み換え農産物の場合、または遺伝子組み換えのものと遺伝子組み換えでないものとを分けて管理をしていない(=一緒くたにしている、証明書の保管がされていない)場合、「遺伝子組み換え」「遺伝子組み換え不分別」等の表示の義務があります

今回、この義務表示部分に関しては変更はありません。

2023年4月から変更となったのは、「任意表示」の部分です。

遺伝子組み換えでないものを分別して(=分けて)使用している場合には、その旨を表示する義務はありませんが、事業者が任意でその旨を表示することができます。

任意なので、もちろん「遺伝子組み換えについて何も表示しない」ことも可能です。

多くの場合、遺伝子組み換えでない原材料は、遺伝子組み換えのものよりコストが高くなるので、遺伝子組み換えでない原材料を使用している事業者の多くは、遺伝子組み換えでない農産物を使用していることを消費者に訴えたいと考えるでしょう。

新しい表示制度までは、分別生産流通管理を行っており、意図せざる混入率が5%以下に抑えられている場合、「遺伝子組み換えでない」と表示することができました。

実はこの「意図せざる混入率5%」という基準が甘いのではないか、と長らく言われてきていたのです。

例えばEUでは、「遺伝子組み換えでない」と表示できる基準は、意図せざる混入率が0.9%以下に抑えられている場合です。それに比べると5%は高く、「遺伝子組み換えでない」と表示することへの疑問が呈されていたのです。

意図せざる混入とは何でしょう。

意図せざる混入はダイズとトウモロコシにおいて認められているもので、遺伝子組み換えでない農産物の分別生産流通管理を行っていても、やむなく(=意図せず)遺伝子組み換えのものが混入してしまうことがある、ということをいいます。

ですので、例え5%以下であっても、敢えて(=意図して)遺伝子組み換えの農産物を混ぜたとしたら、それは分別生産流通管理をしたものとはみなされず、「分別生産流通管理済み」と表示することはできません。

2023年4月より、この意図せざる混入率5%が見直され、結果として意図せざる混入が認められない場合、つまり結果として混入率ゼロのもののみ「遺伝子組み換えでない」と表示することができることになりました。

一方、これまでどおり分別生産流通管理を行っていて、意図せざる混入率を5%以下に抑えられている場合には「分別生産流通管理済み」等と表示することが認められています。

事業者としては、どんなにきちんと分別生産流通管理をしていても、行政によるサンプルテストなどで遺伝子組み換えのDNAが検出されると表示違反となるので、「遺伝子組み換えでない」と表示することに慎重になる事業者が増えるでしょう。結果、「遺伝子組み換えでない」と表示される食品は非常に少なくなるのではないかと考えられます(2023年3月末までに製造された食品に関しては旧制度での表示が認められていますので、当面は混在します)。

このように、「遺伝子組み換えでない」と表示される食品が少なくなるであろうこと、敢えて何も表示しない食品が増えることで、消費者の選択がせばめられるのではないかという懸念もあります。

しかし裏を返せば、「分別生産流通管理済み」等の表示または表示のないものは(そもそも表示義務のない植物油脂やしょうゆ等があることに注意が必要ですが)、従来「遺伝子組み換えでない」と表示されていたものと同義であることを知り、逆に混入率がゼロである「遺伝子組み換えでない」という選択肢が新たに加わったと考えることもできます。

わたしたち消費者もまた食品表示を学ぶことで、食品の実態や食品関連事業者の思いなどを汲み取ることができるようになるのではないでしょうか。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

シェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

食の勉強をするうちに、
すっかり食品表示にハマってしまいました。
スーパーなどに行くと、いろんな食品をひっくり返して
なかなか買い物が終わらないのが悩みのタネ。
食品表示のことならお任せください!

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次